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「つーかさ、お前が後ろに乗るせいで最近膝が筋肉痛なんだけど」
「何それ、私が重いとか言うつもり?」
「ん」
「えっ……お、重いのかな……またダイエット……」
二人乗りでたまには後ろに乗ってみたかった(楽をしたかった)から変な嘘をついてみたら西尾は一人ぶつぶつと言い始めた。
この女、頭弱そうなギャル寄り女子高生のくせにふとしたキッカケで深く考え込んでしまうからめんどくさい。
「冗談だよ。たまには後ろに乗ってみたいってだけだ。今のままが一番ベストで可愛い体型なのにそれ以上痩せようとすんなよ、干物になんぞ」
「……そ、そう?」
「おう。なんやかんやお前可愛いからな」
「……分かった。いいよ、私が運転する」
女が全員そうかは分からんが、少なくともこいつは可愛いという言葉に滅法弱い。
そして俺は心にもない言葉を心から言ってるように振る舞う虚言のプロだ。
「……えっと、悪い。どこを掴めばいいんだ?」
「は? あー、私いつも横向きで乗るからあんたの体掴まないもんね。横向きで乗ればいいじゃん」
「嫌だよ女みたいじゃん」
「なら腰を掴みなよ」
「えっ!? 大丈夫!? 折れない!?」
「どんな心配だよ……」
「だってお前華奢じゃん。なんか触れたら傷つけてしまいそうで怖いよ……」
「そんな脆いわけないでしょ! ほら、乗りな!」
「へいへい」
言われて渋々後ろに乗る。
俺が良いという意味の合図のつもりで肩を優しく叩き、「好きなタイミングで走れ」と言うつもりで「好き」と言った所で西尾はビクッとした後テンパった様子で話しかけてくる。
「なっ、なななっ、何!?」
「……はっ? 何テンパってんのお前、頭大丈夫?」
「だ、だっていきなり……肩叩いてす……好きとか……」
「反応早いわ! 好きに敏感すぎだろ! 好きなタイミングで走れって言おうとしただけなのに言い終える前に誤解されちゃったよ!」
「ま、紛らわしいのが悪い!」
「……俺が悪いのかこrおっと」
西尾は俺が言い終わる前に漕ぎ出す。
「ま、好きだけどな。お前の事」
「……えっ!?」
「嘘。面白いなお前、ギャルゲーキャラ並みにチョロインだわ」
「……クソ野郎」
何年かぶりに、愛想ではない笑みが浮かんだ。
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