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穏やかだ…。
俺は縁側に座り、庭を眺めてた。
ばあちゃんが手入れしている庭は、花のかわりに若葉が濃く色付き始めていた。
郊外といえど、和風でマイナスイオンを放っているのはこの家くらいだろう。
この、静かで清々しい空気が心地良かった。
何よりも、
「あったけー…」
春の終わりのこの時期、陽が一番ぽかぽかしていた。
「や、ご老人」
ふと、視界に目一杯、女の子の顔が映った。
「とも。…お前、暇人だなぁ」
「あんたほどじゃないわ」
幼馴染みが、俺の横に座る。
高校生が、休みの日の昼下がりに縁側で日向ぼっこなど、奇妙な光景だろう。
「遊びに行く友達とかいないの?」
「あー。買い物とかデートって言ってたなぁ」
「友達の予定じゃなくて…」
「俺? 日向ぼっこ」
性格を熟知してるはずのともですら、呆れだしてる。
「お前こそ、街に出掛けたら良いだろ」
「…せっかくの休みだし」
「さよか」
ともなら、誘いくらいいくらでもあるだろう。
彼女の性格は男女問わず人気で、クラスでも目立つ存在だった。
その影響で、俺も、変に目立ってしまった。
彼女が教室で話し掛けて来るから。
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