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「残念だけど誰もいないよ、お姉さん。」
男が寝室から戻って来ると淳が私の下着のホックを外そうと背中に手を回す。
「いやぁ!助けてっ!!」
「おい、写メ撮れよ!いや、動画がいいな!!」
私の手首を掴む男が淳を煽る。
「やめてっ!助けて…お願い…」
泣きながら懇願しても、淳はポケットから携帯を取り出し私に向ける。
「へへへっ、いいねー。もっと嫌がってみろよ。」
『アマネ…早く名前を呼ぶんだ!』
「っ!…ゼルっ、助けてっ!!」
突然玄関のドアがバンと開き、あろう事か警察官が数人踏み込んで来た。
咄嗟にシャツで身体を隠し、焦った淳達は窓際まで追い詰められ呆気なく現行犯逮捕された。
「大丈夫ですか?」
手を差し出してくれた警察官に首を振った。
「アマネ!!!」
聞き覚えのある声に驚いて顔を上げると眼鏡をかけたゼルが立っている。
「ゼル…」
暫くして警察官達が部屋から去るとゼルは震える私を抱きしめた。
「アマネ…無事で良かった。」
「どうして…」
「あの時の男がアマネの部屋の前をうろついていたので、警察官を呼んだのです。アマネが私の名前を呼んでくれなければ部屋には入れなかった。」
目を伏せる私の顎をすくい上げ、ゼルが見つめる。
「アマネ、私は貴女から離れる事が出来ない。例え貴女が誰のモノでも…」
胸の鼓動が高鳴る。
「もう、貴女から目を逸らす事も、自分の気持ちを誤魔化す事も出来ない。」
「ゼル…」
「アマネ…私は出会った時から貴女に…心を奪われ…それを誤魔化す為に貴女が嫌がる事を…、貴女に嫌われるような事を…」
ゼルの気持ちが私の心に流れてくる。
「あの日言った言葉は本当です。貴女が誰のモノでも構わない。私を貴女の側に…置いて下さい。狂おしい程…アマネが好きです。」
こんなに素敵な告白は初めてだ。
私は…私が好きになった人から好きだと言われた。
この胸を痺れさせる熱い感覚に気を失いそうだ。
「アマネ…?」
「私も…ゼルが好き…」
ゼルの瞳が大きく見開かれ、ゆっくりとゼルの唇が私の唇に触れた。
触れただけで、とろけてしまいそうな程、私の身体は痺れた。
初めて…キスしてる時に目を閉じた気がする。
初めて…本当に好きな人とキスした気がする。
触れるだけのキスから、私の唇をついばむように角度を変えて何度も口づける。
「…んっ…」
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