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花は、私に寄り添う。
四季折々、可憐に、華やかに、優しく咲く。
季節の移り変わりと共に、様々な花々が私たちを魅了する。
小さな蕾は、陽の光を浴びて、水分を欲し、呼吸をして、音も立てずに静かに咲き誇り、心地良い香りを辺りに振り撒く。
旬を迎えるその短い一瞬に、最高の状態で咲いていられるように。
そして、その見頃を迎えると花は朽ちて、種を残し、大地へ還る。次の季節にまた蕾がほころぶように。
なんて短い一生なのだろう……
だから、精一杯に咲き乱れるの?
だから、あんなに綺麗なの?
私は、彼の前でどんな花を咲かせることが出来たのだろうか。
彼の瞳に、脳裏に、私という存在を残すことが一瞬でも出来たのだろうか。
優美に咲く大輪の花のように、彼の隣に居るのではなく、常に寄り添うような、そんな存在で居たかった。
今はもう、叶うことはないその願い。
失った恋心から前へ進む為に、この土地に帰ってきたはずなのに、ここで過ごした彼との思い出が蘇る度に、私の心をかき乱す。
早く忘れなくちゃならないのに、心がそれを簡単に許してくれない。
今日もまた、私は無意識に青い花を目で追う。
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