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もしかして、この子……
胸に付けられた一年生を示す黄色いバッチに書かれた名前を見て、「やっぱり」と心の中で呟く。
先日、店長から見せて貰ったある一枚の写真。入学式と書かれた立て看板の前で、大きな傘から少し顔を出した女の子の顔と一致した。
あの時連日降った雨は、桜の花を早々と散らし、強風が吹き荒れる中撮ったであろう一枚に写った女の子は、今にも泣きそうな顔をしていた。
今日、店長は新しい仕入先に打ち合わせの為、午後から不在にしていた。
お母さんである店長が、この時間にならお店に居ないことを知っていたのかな。
「お母さん、絶対に喜ぶね」
私がそう言うと、写真の中では曇りがちだった表情が、ガーベラが咲くような満面の笑顔に変わる。
ラッピング用に彼女が選んだリボンの色は、女の子が好きな赤でもなくピンクでもなく、店長が好む水色のリボンを選ぶ。
ラッピングが終わった一輪をお客さまに手渡し、お代として手持ちの180円を頂く。
「お姉さん! ありがとう!」
そう言って微笑んだ顔には、店長と同じ位置に咲いた可愛いえくぼ。
私は彼女の弾むような後ろ姿を見ながら、数時間後の涙脆い店長を想像をする。嬉しくて、嬉しくて、カーネーションには花雫が零れ落ちるだろうな。
その日、店長が仕入先から戻ってきた後、私は早めに帰宅するように強引に促した。
素敵な時間を花と共に過ごせますように……そんな願いを込めながら。
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