一時限目:入学式

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*  ベルは馬車の窓を開け、自分の銀髪に酸素を与え、父譲りの端正な顔を気持ちよさそうに緩める。  馬車に揺られること三時間。祖国の田園風景を抜け、国境近くの関所を抜けるとネーブル軍事学園は目と鼻の先である。ベルはふと田園風景を見ながら祖国、ヴァイシャ=エスペインのことについて考えていた。  ヴァイシャ=エスペイン。世界各国から腕利きの傭兵ががギルドと呼ばれる施設に集まり日々モンスター討伐や、要人の護衛等の依頼をこなしそのマージンで国家をなりたてていることから傭兵国家とも呼ばれている。また歴史は意外にも深く、その昔エスペインと呼ばれる肌の浅黒い奴隷が作ったと言われており、そのためベルを含め国民の肌は浅黒く他の国の人間からすれば一瞬でわかられる。治安もほかの国に比べたら最低ランクで筆舌しがたい事件が毎日起こっている。  しかし、ベルはそんなヴァイシャ=エスペインが好きだった。何故ならこの国はいい意味でも悪い意味でも平等なのである。いくら金を持っていなかろうと親が貧しかろうと自分自身が何かしら秀でたものがあれば巨万の富をつかむことができるからだ。そのいい例がベルの祖父である。  ベルの祖父、エルステイン=クリストフォーゼは以前の国の貴族、王族の依頼を優先的に受ける腐敗したギルドを憂い、自分の腕っぷしだけを信じ傭兵団『エルステイン』を作った。そして、真摯に依頼を受けて続けている内にいつの間にか国家一の傭兵団になっていた。
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