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「ベルさん、そろそろ、着きますぜ」
髭ずらのいかにも荒くれ者風な御者の男が中にいるベルに声をかけるとベルはただうなずき学校のための荷物をまとめ始めながら、行く前にもらった制服に着替える。
黒地に赤のラインが入ったブレザーに灰色のパンツ。そして、白のYシャツには校章である鷹が刻印されている。触り心地や重さから判断するに、とてもいい材料を使っているのがわかる。先ほどまで着ていた私腹を脱ぎYシャツに腕を通す。いつも、戦闘装束か私服なので妙な緊張感が体を走る。そして、パンツとブレザーを着てから、腰に愛刀を差すとベルは妙な違和感を覚えた。
「おい、ウルフェン。ネクタイがないじゃないか」
ウルフェンと呼ばれた御者は困ったような仕草を取りながらも集中しながら馬を動かす。
「へぇ、そんなんあっしに聞かれても困りまさぁ。なんせ、あっしは学校に通ったことがありやせんから」
言い終わった後、ウルフェンは豪快に笑う。
「はぁ、そうだよな。ウチ脳みそ筋肉な奴らばっかだもんな」
ベルは皮肉交じりにウルフェンに返答すると、ウルフェンはただ苦笑していた。
そんなこんなしてるうちに外を覗くと随分な町だった。ベルはネーブルの中心街に来るのは初めてで見るものすべてに関心を奪われていた。
「若!!着きましたぜ」
ベルが気づいた頃には馬車の前に石造りの立派な校舎がそびえ立っていた。ベルは荷物を丁寧に地面に下した後、自分も馬佐の中から飛び降りる。
「ウルフェン。ご苦労だったな」
ウルフェンは柄にもなく急に泣き出しそうな顔になる。
「若ぁ、ほんとに、気をつけて下さいねぇ。もし苛められたらあっしに手紙を書いてくだせぇ。若の一番隊と共に学校に乗り込むんでさぁ」
ウルフェンの中ではいつまでも自分は子供なのだろうと思うとベルは苦笑する。
「大丈夫だ。それより、お前こそ俺がいない間に一番隊壊滅とかやめろよ?」
ウルフェンはにかっと笑い自分の胸を思いっきり叩く。
「任せてくだせぇ」
ベルはウルフェンのその様子ににこりと頷く。
「じゃあ、俺はもう行くからな」
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