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ベルがあれこれ思考を巡らせている間に目的の三階の教室に着く。ドアを開け教室に入ると、前の黒板に咳の場所が書かれた紙が貼ってある。ベルの名前は一番後ろの右から二番目に書いており、特に何の感情も湧かず席に着く。
ベルは席に座ったものの暇なので教室の人間を観察する。
このクラスに限った話ではないが、やはり肌の白いウェステイン人やハーネス人、バルティ人が多い。自分のように少し浅黒い人間はあまりいない気がする。そしてこれは当たり前のことだがどいつもこいつも皆緊張感がない。皆、軍事学校とだけあって各々の武器を帯同しているが、もし今自分が彼ら全員を殺そうと思えば一人も武器を抜かせず殺せる自信がある。
戦場はそれこそヒリヒリとした殺気と独特の空気があったが、このクラスには1㎜もない。たぶん彼らは一言念仏を唱えれば未練なく突っ込んでくる軍隊などみたら失神して倒れてしまうだろう。
「ねぇ、君」
ベルは考え事をしていたところに急に前の席から話しかけられぎょっとするが、顔に出さず冷静を装う。どうやら、話しかけてきたのは目の前にいる背の低いカッコいいと言うよりは可愛いといった印象を受けるどこか残念な白肌赤毛の彼だろう。
「なんだ?」
目の前の少年はにこりと笑う。
「俺、カイト=グランス。気軽にカイトって呼んでよ」
おそらくこの目の前にいる男が自分の学園生活史上初の友達と呼べる人物になるのだろう。そう思うと少しばかりベルは緊張してきた。
「俺はベルベッサ=クリストフォーゼ。皆は俺をベルと呼ぶ」
少しばかりぶっきらぼうになってしまったかもしれないと思いつつ、毅然とした態度でカイトに臨む。対するカイトもやはりあまりにも荘厳な自己紹介にすこし気圧されていた。
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