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相手が警視総監のため、なんとも言えない。
「私の娘が推理したことを代わりに言ってもらいたいんだ。もし、命でも狙われたら大変だからね」
君しかいないんだよ、と言われれば断るに断れない。
「わ…わかりました。娘さんのお名前を伺っても?」
僕、質問ばっかだな。
藤波から娘の名前を訊きながら、ふと思った。
藤波は「よろしく頼むよ」と言って、電話を切った。切れたのを確認して受話器を置く。
僕は「…ふう」と息を吐き、天井を見上げた。
忙しくなりそうだ。
小さく呟き、自嘲気味に笑った。
その様子を見ていたらしい同僚が、心配そうな顔で訊いてきた。
「どうかしたのか?」
「なんでもないよ」
「それならいいけどよ。お前、たまに無茶するしな」
心配かけまいと、当たり障りのない返事をした。一回、同僚の前で疲労で倒れかけた前科がある。
まあ頑張れよ、と背中を思いっきり叩かれた。その拍子に、少しむせたの僕しか知らない。
「よし!」
小さく呟き、頬を数回軽く叩いて気持ちを入れ替えた。気合いを入れるときや気持ちを切り替えるときは、いつも数回叩くのが癖になっている。
長年やってるため、なかなか癖が抜けない。
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