プロローグ

7/8
前へ
/16ページ
次へ
相手が警視総監のため、なんとも言えない。 「私の娘が推理したことを代わりに言ってもらいたいんだ。もし、命でも狙われたら大変だからね」 君しかいないんだよ、と言われれば断るに断れない。 「わ…わかりました。娘さんのお名前を伺っても?」 僕、質問ばっかだな。 藤波から娘の名前を訊きながら、ふと思った。 藤波は「よろしく頼むよ」と言って、電話を切った。切れたのを確認して受話器を置く。 僕は「…ふう」と息を吐き、天井を見上げた。 忙しくなりそうだ。 小さく呟き、自嘲気味に笑った。 その様子を見ていたらしい同僚が、心配そうな顔で訊いてきた。 「どうかしたのか?」 「なんでもないよ」 「それならいいけどよ。お前、たまに無茶するしな」 心配かけまいと、当たり障りのない返事をした。一回、同僚の前で疲労で倒れかけた前科がある。 まあ頑張れよ、と背中を思いっきり叩かれた。その拍子に、少しむせたの僕しか知らない。 「よし!」 小さく呟き、頬を数回軽く叩いて気持ちを入れ替えた。気合いを入れるときや気持ちを切り替えるときは、いつも数回叩くのが癖になっている。 長年やってるため、なかなか癖が抜けない。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加