Scene.1 -古びた人形-

22/37
前へ
/121ページ
次へ
雨は次第に強まり、滴の粒も大きくなってきた。 腕に抱いた埃まみれの人形を庇いながら、早足で離れの軒下へと急ぐ。 縁側の脇から母屋に延びる渡り廊下へ目をやると、仏間から翔琉の兄の静留君が出てくる姿が目に入った。 「静にぃ、またお菓子持ってったでしょ!」 彼の手にはポテトチップスの袋とチョコレート菓子の箱。 お菓子が大好物の静にぃは、時々こうやって仏壇に供えたお菓子をこっそり盗みに来るのだ。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加