少年の足取り

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 少年は転移の気持ち悪い感覚を味わい、目的地に到着した。  そこはとても狭くて、魔法陣があるだけの部屋だ。  部屋を出ると、どこからかの叫び声。 『寝ぼけてんじゃねぇ! さっさと起きやがれ!』  声と共にフライパンを叩く音も聞こえてくる。  なにで叩いているか?  おたまで、だ。  少年は喧騒の聞こえる方向へ向かう。誰もいない廊下を、スタスタと。  この"ギルド"─── 『霊峰』の廊下を。  飾り気のない廊下だ。だが何かが圧力を感じさせる。  やがて廊下に野郎共が出てきた。寝癖がついている奴がほとんどの、寝惚け集団だ。  集団は曲がり角を曲がって、少年からは見えなくなっていく。  一人も少年に気付かない。どれだけ寝惚けているのだか。  集団と言えど5人ほどで、皆若そうだ。  唯一、集団の最後にいた人物は少年に気が付いた。 「よぉ! 相変わらず早いな! 今日も頼むぜ、スノウ!」 「その名前で呼ぶな」  親しげにフライパンを振って話しかけてきた青年に対し、少年は顔をしかめた。 「そう、俺はもうそんな名前じゃない。......俺の名前はヴィンセントだ!」 「また変わってんぞー、名前変えるなら統一しろよっと」 「ぐべッ!」
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