少年の足取り

8/15
前へ
/124ページ
次へ
 だがそれはそれは違う。   この少年は決してそんな訳の分からないことをする人間ではない。  それよりも少しはまともなはずだ。   現に、少年の人差し指によって一粒潰されて、変化が起こった。  本棚の奥の1部がカポッと手前に動き、右に避けたのだ。  その先には金庫についていそうな、電子機器が存在している。横には少年のリュックサックより少し小さいくらいの扉。  扉を開かせるために電子機器がある、ということだ。  機械はなんと、12桁の数字を打たないといけない代物だ。  そんな物を簡単に開けると、少年はリュックを無理やり扉の向こうに押しやり、自分も入っていった。   足から。  下半身が向こう側に入ると、少年は床に置いてあった分厚い本を本棚に戻していった。  もといた場所から見れば、少年が扉を通る前と変わりはない。  床に積もっていた埃の場所は変わったが。  それ以外は変わったことなどない。  隠し扉があるなんて、誰も気付かないだろう。  今更ながら、少年が通ったのは隠し扉だ。  だから本やプチプチを押したり、通常ならお目にかかれない、金庫についていそうなものを弄っていたりしていたのである。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加