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少年が入ったのは、光の届かない真っ暗な世界。
だが少年は目を凝らすこともなく、リュックを背負って足を動かした。
見えている、と言うより、慣れている、と言った方が正しいような様子で階段を下りていく。
少しすると階段は終わり、小さな部屋に出た。
少年は部屋の中央で立ち止まると、ポケットの中から薄い青色の宝石のような物を指で摘まんだ。
それを潰しながら、一言。
「『霊峰』へ」
青っぽい結晶が完全に砕かれると同時に床が幻想的に輝いた。
輝いているその模様はまるで───いや、"まさに"魔法陣。
魔法陣の輝きは次第に強まり、少年の姿は光によって隠されていく。
数秒後。
そこには何も存在していなかった。
少年も、背負われていたリュックサックも、全て。
魔法陣は光らなくなり、暗闇だけが存在している。
この空間に何があるのかも、分からなくなっていた。
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