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「……って、僕なんかは考えるわけだけれど。どうかな?」
四方を鉄で囲まれ、どこで空気の入れ替えをしているのかもわからない六畳ほどの小さな部屋。
不気味な明かりが部屋を薄暗く照らしている。
異臭のこもった部屋の壁には、両腕を拘束された少女が繋ぎとめられていた。
「ははっ。もう声も出ない?」
地面に顔を突っ伏したまま、微動だにしない。
彼女の名前は桐島彩。
僕をいじめていた、人間の底辺である。
かつての面影はもうない。
凛々しさの中に美を含んでいた顔は、今や見るだけで痛々しいほどにあちこちが擦り切れ、腫れている。
鼻は潰れ、左目にいたっては瞼が腫れていて、もはや開けない状況だ。
左小指は切り落とされ、右小指はトンカチで叩き潰されている。
お風呂に入れず垢だらけの身体や、ただ流される排出物が異臭とともに彼女を包む。
けれど、呼吸はしている。
生きたまま死んでいる。
ここでは、彼女はそんな存在だった。
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