第4章 原川 1

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長峰ちゃんの言葉に、俺と新村が黙ったまま顔を見合わせた。 「え、え? どうしたんですか?」 俺たちの反応を見て、長峰ちゃんが困惑する。 「私、そんな変なこと言いました?」 新村が呆れた様子で溜息を吐いた。 そして説明してやれと言わんばかりに俺の目を見る。 「うーんとね……率直に言うけど、あれ、九字間じゃないよ」 「え、違うんですか?」 長峰ちゃんが目を丸くする。 こういうところだけ見れば本当にただの女の子みたいだ。 「でも、自己紹介してたじゃないですか」 「そりゃあ、九字間を演じるんだから九字間だって名乗るだろうよ」 我慢できなくなったのか、新村が口を挟む。 「考えてみろ。九字間みたいな奴が、いくら音声だけとは言え、リアルタイムで誰かと接触すると思うか?」 九字間ほどの「権力」を持っていれば、必然と日常的に命を狙われる。 恨みを持つ人間の数だって尋常じゃないだろう。 そんな立場の人間が、自分の痕跡を残すはすがない。普通なら、だけれど。 しかも音声通話というわかりやすい形で。
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