13150人が本棚に入れています
本棚に追加
長峰ちゃんの言葉に、俺と新村が黙ったまま顔を見合わせた。
「え、え? どうしたんですか?」
俺たちの反応を見て、長峰ちゃんが困惑する。
「私、そんな変なこと言いました?」
新村が呆れた様子で溜息を吐いた。
そして説明してやれと言わんばかりに俺の目を見る。
「うーんとね……率直に言うけど、あれ、九字間じゃないよ」
「え、違うんですか?」
長峰ちゃんが目を丸くする。
こういうところだけ見れば本当にただの女の子みたいだ。
「でも、自己紹介してたじゃないですか」
「そりゃあ、九字間を演じるんだから九字間だって名乗るだろうよ」
我慢できなくなったのか、新村が口を挟む。
「考えてみろ。九字間みたいな奴が、いくら音声だけとは言え、リアルタイムで誰かと接触すると思うか?」
九字間ほどの「権力」を持っていれば、必然と日常的に命を狙われる。
恨みを持つ人間の数だって尋常じゃないだろう。
そんな立場の人間が、自分の痕跡を残すはすがない。普通なら、だけれど。
しかも音声通話というわかりやすい形で。
最初のコメントを投稿しよう!