第1話

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「まあ、俺があいつのストッパーにならなきゃ、誰がなるんだって話だからなぁ。有坂も一見しっかりしてそうに見えて、…まあ、実際しっかりしてるだろうけど、意外にあいつに甘いし…」 そこで橋口は、有坂が自分の話を全く聞いていないことに気付いた。 彼は橋口を全く見ておらず、考え事をしている様子だった。 「有坂?急に黙りこくってどうしたんだ?」 橋口が心配そうに顔を覗き込むと、やっと有坂はハッとして橋口の顔を見た。 「…まだ具合が悪いのか?」 有坂は微笑んで、首を左右に振った。 「違うよ。でも…」 「どうしたんだ?」 「…なあ、橋口。変なこと聞いてもいいか?」 「え?ああ、どうぞ」 「…お前、昔よく泣いてた?」 途端に橋口がきょとんとする。 「俺が?いや…よく泣く様な子供じゃなかったと思うけど…」 「…そうだよな、悪い、何でもないよ」 あの子は橋口ではないと分かっていて、尋ねてみただけだ。 しかも有坂が覚えている、橋口の一番幼い頃に比べてもあの子供は幼すぎていた。 彼が何かを隠していると感じ取った橋口は、心配げな表情で眉をひそめた。 (お前は、いつもそうなんだ…)
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