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「まあ、俺があいつのストッパーにならなきゃ、誰がなるんだって話だからなぁ。有坂も一見しっかりしてそうに見えて、…まあ、実際しっかりしてるだろうけど、意外にあいつに甘いし…」
そこで橋口は、有坂が自分の話を全く聞いていないことに気付いた。
彼は橋口を全く見ておらず、考え事をしている様子だった。
「有坂?急に黙りこくってどうしたんだ?」
橋口が心配そうに顔を覗き込むと、やっと有坂はハッとして橋口の顔を見た。
「…まだ具合が悪いのか?」
有坂は微笑んで、首を左右に振った。
「違うよ。でも…」
「どうしたんだ?」
「…なあ、橋口。変なこと聞いてもいいか?」
「え?ああ、どうぞ」
「…お前、昔よく泣いてた?」
途端に橋口がきょとんとする。
「俺が?いや…よく泣く様な子供じゃなかったと思うけど…」
「…そうだよな、悪い、何でもないよ」
あの子は橋口ではないと分かっていて、尋ねてみただけだ。
しかも有坂が覚えている、橋口の一番幼い頃に比べてもあの子供は幼すぎていた。
彼が何かを隠していると感じ取った橋口は、心配げな表情で眉をひそめた。
(お前は、いつもそうなんだ…)
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