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有坂と橋口は、所謂幼馴染みだ。
比較的家も近かかった二人は、小学生の時には毎朝一緒に学校に通っていた。
クラスは違ったが、二人とも穏やかな性格で、しかも馬が合った為、永く仲良くしていた。
六年生の時に有坂が引越しをしたが、それでも学区は同じだった為、同じ中学校に進学した。中学校では二学年から同じクラスになり、矢仲とはその時出会った。
矢仲は同じ小学校だった二人の話を聞きたがり、よく尋ねて来たが、それに応えるのは専ら橋口だった。
有坂は良く覚えてないのだという。それどころか橋口は有坂が
「小学校同じだったっけ」
とボソリと呟くのを聞いた事さえある。
声は小さく聴き取りづらかったけれど、その声色は、彼が本気でそう言っていると橋口に確かに伝えていた。
橋口は聞かなかったふりをした。否、あまりの衝撃に何も言えなかった。
彼の心の中の、一番脆くて柔らかい所に踏み込んでしまいそうで。そしてそれを壊してしまうかも知れないと思ったら、どうしようもなく恐ろしくて身動きが取れなかったのだ。
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