第1話

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今日も、有坂の夢の中では誰かが泣いていた。 どうしたの、と問いかけても答えないし、名前も聞き取れない。 泣いている少年が、有坂を拒んでいるかのように。 「だったら何故、俺の夢に出てくるんだ」 そうポツリと呟きたかったが、彼はぐっと我慢していた。 もしかしたら自分が彼を、無意識に拒んでいるのかもしれないと思ったから。 数日経ったある日、またもやクラス会が企画された。 前回のクラス会は集まった人数が少な過ぎて、結局中止になってしまったのだ。 今回の幹事も、勿論矢仲。 少々矢仲は膨れていたが、今回は有坂も来るということで女子をはじめとして大半のクラスメートが来ることになっていた。 「今回は、ドタキャンダメだからな!」 「しないよ。まず、俺ドタキャンしてないし。最初から断ってるから」 と有坂が笑うと、 「どっちも一緒だ!」 と矢仲が声を張り上げる。 いつもと同じような毎日。 だが、そんな二人を眺める橋口の心の中は朧気で、掴みきれない不安感でいっぱいだった。
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