第1話

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「なあ、そっち飲み物まわってるー?」 「唐揚げにレモンかけちゃうよー」 「小皿こっちに頂戴ー!」 ガヤガヤとクラスメートの声で賑わう部屋の中、有坂は少し端の方に陣取っていた。その横には橋口。 幹事の矢仲は、忙しそうに動き回っている。 「ねえねえ、有坂くん!」 女子三人組が、近くに来て座った。手にはジュースの入ったグラスを持っている。 「えっ、何?」 ボーッとお茶を飲んでいた彼は、驚いて顔を上げた。 「驚かせちゃった!」キャッキャッと笑い、彼女たちは言葉を続けた。 「有坂くんって、彼女いないんだよね?」 突然の質問に驚く彼だったが、正直に答える。 「うん、いないよ」 「そうなのー!?」 こころなしか嬉しそうな彼女の様子を見て、彼は内心首をかしげた。 「それが、どうかした?」 と、笑って問いかけた途端に、彼女の顔が赤くなった。 付き添っている二人の友達に、つんつんと急かされ、更に赤くなる。 横で見ていた橋口は、内心呆れていた。 それは鈍過ぎる有坂に対してでもあり、回りくどすぎる女子に対してでもあった。 「あ、あのね!私、有坂くんのことが…」 と言いかけた途端、それに被る様に「有坂ー!」と彼を呼ぶ声がした。
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