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「なあ、そっち飲み物まわってるー?」
「唐揚げにレモンかけちゃうよー」
「小皿こっちに頂戴ー!」
ガヤガヤとクラスメートの声で賑わう部屋の中、有坂は少し端の方に陣取っていた。その横には橋口。
幹事の矢仲は、忙しそうに動き回っている。
「ねえねえ、有坂くん!」
女子三人組が、近くに来て座った。手にはジュースの入ったグラスを持っている。
「えっ、何?」
ボーッとお茶を飲んでいた彼は、驚いて顔を上げた。
「驚かせちゃった!」キャッキャッと笑い、彼女たちは言葉を続けた。
「有坂くんって、彼女いないんだよね?」
突然の質問に驚く彼だったが、正直に答える。
「うん、いないよ」
「そうなのー!?」
こころなしか嬉しそうな彼女の様子を見て、彼は内心首をかしげた。
「それが、どうかした?」
と、笑って問いかけた途端に、彼女の顔が赤くなった。
付き添っている二人の友達に、つんつんと急かされ、更に赤くなる。
横で見ていた橋口は、内心呆れていた。
それは鈍過ぎる有坂に対してでもあり、回りくどすぎる女子に対してでもあった。
「あ、あのね!私、有坂くんのことが…」
と言いかけた途端、それに被る様に「有坂ー!」と彼を呼ぶ声がした。
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