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声の主は矢仲だった。
「ん、何ー?」
「山本が、お前に聞きたいことがあるんだってさ!ん…橋口、何だよ睨んで…アタッ!!」
近寄ってきた矢仲を、橋口が無言で小突いた。
「ごめん、何だっけ?」
有坂は申し訳なさそうに話題を戻そうとしたが、彼女はハッとして、「ううん」と言った。
「ごめんね、何でもないの。…山本くんのところに行ってあげて」
「あ、そうなの?うん、行ってくる」
残念そうだったが、自分に向けられた彼の笑顔を見て、彼女は満足そうに頷いた。
自分たちの席に戻っていく彼女らを見送ったあと、有坂は振り向き、矢仲に声を掛けた。
「矢仲お疲れ。そうだ、そこの皿に料理取っといたから食べろよ、何も食べてないんだろ?」
途端に矢仲の表情が明るくなる。
「有坂っ!愛してる!!」
有坂を含め、皆がぎょっとする。
「誤解が生まれるからやめろ!」
そう言いながら、有坂は笑った。
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