175人が本棚に入れています
本棚に追加
県立北高等学校…称して北高の放課後は賑やかだ。
グラウンドを駆け、ボールを追うサッカー部員。
声を合わせてマラソンする柔道部員たち。
バットに球が当る音。
楽しそうにお喋りをする生徒たちに、廊下をパタパタと駆ける音。
それらの中をすり抜けて、有坂芳野(ありさかよしの)は足早に歩いていた。
昇降口で靴を履き替えようとした時、
「おーい、有坂!」
と呼ばれ、振り返った。
夕日の光が逆光になって、よく見えない。有坂は目を細めて自分の名前を呼んだ人を見つめた。
「なんだ、矢仲か」
「俺で悪かったな!…お前、歩くのはえーよ。走って追いつけないってどういうことだよ」
息を切らしながら、矢仲が愚痴る。
「あはは、悪いな。無意識だった」
「まったく、これだから運動できる奴は…!」
「関係ないだろ、それ」
有坂が笑いながら言うと、矢仲はむくれた様に頬をふくらませた。
「そんな顔してもこれっぽっちも可愛いなんて思わないぞ」
「かわいいなんて思われたくねーよ!」
昇降口に、有坂の明るい笑い声が響く。
「で、なに、どうしたの?用があるから呼んだんだろ?」
有坂が微笑みながら問う。
「あ、ああ!そうそう!お前、明日のクラス会来るだろ?」
「クラス会?」
彼は首をかしげた。
「そんなのあったっけ?」
最初のコメントを投稿しよう!