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「おい!ちゃんと俺は言ったぞ!しかもメールもしたぞ!何通も!見てないのかよ!」
あきれ顔の矢仲。有坂は人懐っこい笑顔を浮かべながら頬をかいた。
「悪い悪い」
「悪いって全く思ってないだろ!」
「思ってるよ。でも、俺はパス」
「ええー!?」
その場に居た人がみな振り返るほどの声の大きさ。有坂も思わずギョッとした。
「おま…声でかいよ」
「クラスの女子が、お前が来るなら行くって言ってんだよ。」
「なんで俺?」
有坂の目が点になる。矢仲はそんな有坂を一瞥したのち溜息をついた。
「俺に聞くな!これだからモテる奴は!」
「知るかよ。まあ、考えておくよ。でも、今んとこパスね」
不満そうな顔をしている矢仲に苦笑いしながら手を振り、昇降口を後にした。
クラス会みたいなものにはあまり行ったことがない。
大勢で居ること自体苦では無いが、特段好きでもないからだ。
ふと時計を見ると5時30分をまわっていた。
外に出ると緩やかな風が頬を撫で、髪の毛をゆらりと揺らして通り過ぎる。
この季節の風は少しひんやりしていて気持ちがいい。そう思って空を仰ぎ、伸びをして欠伸をかみ殺す。有坂は自転車に乗り、風に乗るようにゆっくりと漕ぎ出した。
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