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自転車を漕ぎ出してしばらく経った時。ポタリと音を立て大粒の何かが頭に当たった。
「ん?」
自転車を止め、上を見上げると、顔に何粒もの雨が降り掛かった。
「やばっ・・・!」
雨は急に大降りになり、自転車に乗るのも不可能になってしまった。
目の前に見えた大きな建物の軒下に飛び込む。
有坂は溜息をついて額を拭った。
制服にも籠の中の荷物にも、濃色の斑模様ができていた。
今朝の天気予報では雨だなんて一言も言っていなかったのに。
夕立が降るにはまだ幾分にも早い季節。眉を潜めてもう一つ溜息をついた。
雨が止むまで、この建物の下で雨宿りさせてもらうことにしよう…。そう決めるとぐるりと辺りを見回し、「県立図書館」の文字を見つけた。
そう言えばここ図書館だ。図書館…昔はよく通ってたんだっけ。
有坂は何だか懐かしく思って、入ってみることにした。
自転車を手短な駐輪場に停め、リュックの中からタオルを取り出し、濡れた髪と制服を拭う。
ウィーン・・・という音とともに開く自動ドア。少し懐かしい図書館の独特な香り。
書庫をゆっくりまわりながら見物していく。
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