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「おはよう」「おはよー!」
生徒達の楽しげな声が校舎のあちこちから聞こえてくる。
北高の朝も賑やかだ。否、北高は何時でも賑やかかも知れない。
学校が賑やかで活気に溢れているのはとても好ましいのだが…。
(今日はこの賑やかさが苦痛だ…)
有坂はガンガンと痛む頭をおさえた。
「よっ!有坂っ!」
バンっと背中を叩かれ、「うっ」と顔をしかめる。
「…矢仲…」
「おう!…なんだよ、有坂。具合でも悪いのか?」
「ああ、頭がちょっと…」
「ええっ!?まじなの!?」
矢仲の大声が頭に響く。
なにか言う気力もなく、ただ睨む。
「あ、ああ、悪い…」
矢仲が目に見えてしょんぼりと肩を落とした。
「…いいよ、別に」
有坂は苦笑して机に伏せた。
「お前が具合悪いって相当だよな…昨日濡れたりした?」
「…」
そういえば。昨日、びしょ濡れになったっけ。ちゃんと拭いた気でいたけど、足りなかったのかな。
「した」
「ええっ、まじかよ有坂!…あれ?有坂?有坂ー?」
「寝てるだけだよ、寝かせてやれ。お前、病人の前でうるせぇ」
そんなクラスメートの声を聞きながら、有坂は暗く深い眠りの世界に沈んで行った。
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