第1話

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「おはよう」「おはよー!」 生徒達の楽しげな声が校舎のあちこちから聞こえてくる。 北高の朝も賑やかだ。否、北高は何時でも賑やかかも知れない。 学校が賑やかで活気に溢れているのはとても好ましいのだが…。 (今日はこの賑やかさが苦痛だ…) 有坂はガンガンと痛む頭をおさえた。 「よっ!有坂っ!」 バンっと背中を叩かれ、「うっ」と顔をしかめる。 「…矢仲…」 「おう!…なんだよ、有坂。具合でも悪いのか?」 「ああ、頭がちょっと…」 「ええっ!?まじなの!?」 矢仲の大声が頭に響く。 なにか言う気力もなく、ただ睨む。 「あ、ああ、悪い…」 矢仲が目に見えてしょんぼりと肩を落とした。 「…いいよ、別に」 有坂は苦笑して机に伏せた。 「お前が具合悪いって相当だよな…昨日濡れたりした?」 「…」 そういえば。昨日、びしょ濡れになったっけ。ちゃんと拭いた気でいたけど、足りなかったのかな。 「した」 「ええっ、まじかよ有坂!…あれ?有坂?有坂ー?」 「寝てるだけだよ、寝かせてやれ。お前、病人の前でうるせぇ」 そんなクラスメートの声を聞きながら、有坂は暗く深い眠りの世界に沈んで行った。
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