第1話

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見えたのは、白っぽい影。 小さな男の子が泣いていた。 『どうしたの?』 高校生の有坂が問いかけても、男の子は答えない。 (そうか、これ夢だっけ) 有坂は静かに男の子の横にしゃがみこんだ。 前方から、軽快な足音がする。 『×××!』 幼少期の有坂だった。 男の子が、涙に濡れた顔を上げる。 彼に、幼少期の有坂が語りかけた。 『大丈夫、僕がずっと一緒にいるから』 『…うん』 (これ、いつもとは違う場面だ…) 『行こう、×××』 ミニ有坂は、男の子の手を取って歩き出した。 (やっぱり名前は分からずじまいか…) またもやそこで、彼の目は覚めてしまった。 有坂はむくりと起き上がると、自分がいる場所をキョロキョロと見渡し、観察した。 「保健室…?」 目の前のカーテンがシャッと開いた。 「お、目が覚めたね?」 男勝りの女性養護教諭がいた。 「あ、はい」 「なんでここに?って思ってるだろう?」 「…はい」 「矢仲と橋口が急いで運んできたんだ。矢仲なんて、俺のせいだって泣きそうだったぞ」 腰に手を当てた彼女が、ニカッと笑った。 (俺が眠る前に話してた二人か…矢仲には悪いことしたな…) いつか、クラス会に出席してやろうと思った。…いつか。
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