第1章

2/3
前へ
/3ページ
次へ
 酔客のためのつまみやら酒やらを買い込んでコンビニを出ると、雨はまだ降っていた。         しかもこういう時に限ってコンビニの傘は残らず売り切れており、一本もないという甚だ役に立たない状態にあった。  さっきより雨脚が強まっているようにも見えるが、ここは覚悟を決めてずぶ濡れになってやろうじゃないか。 そう心を決めてフードをかぶり、小走りで家に向かおうとしたところに、ずい、と傘が差し出された。見ると、さっき僕が貸した青い蛇の目である。 「あの、これ……お気持ちだけで結構ですから」  そう言って上げた顔は僕と同じくらいと見えて、可愛くはあるが妙に傷だらけである。下を見れば、白い旅行鞄が置かれていた。  なるほど、そういうことか。 「良かったら、家に来ませんか? 傷の手当とか、した方が良いでしょう」  バケツをひっくり返したような雨は、留まるところを知らず止む気配もない。いくら少し大きめの傘を持ってきたとはいっても、二人で入れば肩も濡れる。  くっつこうにも知らない人だし、元々広めのパーソナルスペースが邪魔をしてそう近づくことが出来ない。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加