第1章

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 しかしなんといってもこの沈黙が一番嫌な訳で、僕は今日初めて会った人に対して、この道に関するどうでもいい怪談を語るのである。 「この道って、色々な化け物が出ることで有名なんですよ。河童とか、べとべとさんとかたんころりんとか」 「それはまた、ずいぶんと雑多ですね」 「まあ、嫌がらせのデマですから。僕の家は職業上、あんまり好かれるようなものではないので」  そう言うと、彼女はびくっと身体を震わせて動揺したように僕を見た。  何かまずいことを言っただろうか。 「どうしました?」 「いえ……今あの、僕って……もしかして、男性の方ですか? すみません、そうは見えなかったもので」  なんだ、そういうことか。 「ああ、違います。見ての通り女ですよ。自分でも変なだとは思いますけど、癖になっちゃって」 「なんだ。いえ、気にしなくていいと思います」  彼女はふう、と息を吐いた。  男の娘疑惑を掛けられたようだ。  そこまでかなあ……。  うーん、ちょっとへこむ。 「でも、そんな嫌がらせをされるようなお家って……何をされているのか、聞いてもいいですか?」  ああ、と僕は溜め息を吐き、そして少々迷って聞き心地の良い方だけを口にした。 「地主です」         
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