1人が本棚に入れています
本棚に追加
しかしなんといってもこの沈黙が一番嫌な訳で、僕は今日初めて会った人に対して、この道に関するどうでもいい怪談を語るのである。
「この道って、色々な化け物が出ることで有名なんですよ。河童とか、べとべとさんとかたんころりんとか」
「それはまた、ずいぶんと雑多ですね」
「まあ、嫌がらせのデマですから。僕の家は職業上、あんまり好かれるようなものではないので」
そう言うと、彼女はびくっと身体を震わせて動揺したように僕を見た。
何かまずいことを言っただろうか。
「どうしました?」
「いえ……今あの、僕って……もしかして、男性の方ですか? すみません、そうは見えなかったもので」
なんだ、そういうことか。
「ああ、違います。見ての通り女ですよ。自分でも変なだとは思いますけど、癖になっちゃって」
「なんだ。いえ、気にしなくていいと思います」
彼女はふう、と息を吐いた。
男の娘疑惑を掛けられたようだ。
そこまでかなあ……。
うーん、ちょっとへこむ。
「でも、そんな嫌がらせをされるようなお家って……何をされているのか、聞いてもいいですか?」
ああ、と僕は溜め息を吐き、そして少々迷って聞き心地の良い方だけを口にした。
「地主です」
最初のコメントを投稿しよう!