柳生十兵衛がグランドラインを目指したら

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 新兵衛と澄は、城へ入るなり門を固める出入改(でいりあらため)役の柳生新陰流門弟に「すわぁ! 坊ちゃん、幽霊が憑いてます!」と叫ばれてしまい、問答無用で仏像のある奥の院の広間へと連れ去られた。  そして、今。新兵衛たちの目の前には、仁王様よろしく柳生家の当主、三厳(みつよし)が立っていた。三厳とは、かの有名な十兵衛のことである。我々の世界ではこの時代、宗矩(むねのり)が当主なのだが、この物語では宗矩の代わりに三厳が生まれている。右目は柳生家の替紋(家紋の代わりに使われる略式紋)二枚笠が金で描かれた、黒地の眼帯で隠されている。ただでさえごつい容貌が、これでさらに恐ろしくなっていた。近所の幼子など、十兵衛を見ただけで泣くくらいだ。おかげで城には住民からの苦情が絶えず来る。これはロリコンの十兵衛にとって、この上ない苦しみだった。仕方がないので、居室には精巧に子供を象った抱き枕が置いてある。これで何をしているかは内緒だが、夜な夜なおかしな声は聞こえてくるようだった。……話がかなり脱線したが、これは幼い頃に新陰流〈飛燕〉第四〈月形〉の太刀を習得中に失明したからだとされている。話みじかっ。
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