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「……兄者。もしかして、澄って兄者の好みなの? ひょっとしてだけどさ。難癖つけて俺を斬れば、澄が手に入るとか思ってない?」
「えっ? いやですっ! 私、新兵衛さん大好きですっ! 死なれちゃったら困りますっ!」
「うわっ! 抱きついてくるなよ、澄! なんかゾクッとくるんだよ!」
「へぶろぅっ!」
「え?」
がららららん、と十兵衛の刀が広間の床を転がった。そして、十兵衛は床に手を付いた。
「兄者?」
「……そうか。澄ちゃんは、新兵衛のことが好きなのか……」
十兵衛は項垂れて「くっ」と呻くと涙した。そう言えば、澄はロリコン受けしそうな容姿を持っている。実は十兵衛のドストライクにはまっていた。最初に放った「許さん」という一言には、「そんな可愛い少女がお前のものだなど認めぬぞ。その娘は、わしにこそ相応しい。幽霊だとて関係無し。けしからん。なんとけしからんのだ新兵衛よ。わしはうぬを許さぬぞ!」という意味が込められていた。お前が一番許されない。
「図星だったのかよ!」
新兵衛の絶叫が、奥の院の醸し出す、厳粛な空気を切り裂いた。
新兵衛と澄にとって、大人は危険な存在だった。新兵衛はショタコンに狙われ、澄はロリコンに狙われるのだ。こんなに悲しいことはない。だが、需要には供給が必要だ。膨れ上がり満たされない需要は暴走し、悲惨な事態を招きかねない。だから、二人には是非人々の夢想を叶える人柱となることを望むのだ。誰がだよ。無理だろ常考。
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