〈命石〉は魑魅魍魎を寄せ付けない

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   *   *   * 「それにしても、どうしたものか。澄。うぬは、何故(なにゆえ)に新兵衛にとり憑いた? 離れてはくれぬのか?」  すぐに立ち直った十兵衛は、居住まいを正して正座すると、声を落として問いかけた。 「何故、と聞かれてもわかりませんけど……。あと、離れたくても離れられないみたい、なんですよねっ。てへっ」 「何? なんで?」  てへぺろとばかりに舌を出して頭をこちんと叩く澄に、新兵衛が蒼褪めた。これが本当であれば、これからは四六時中、澄と一緒にいなければならないことになる。別にやましいことなど新兵衛には無かったが、幽霊がいつも一緒ではやはり不安になって当然だ。 「分かりませんっ」 「おいっ!」  快活に絶望的な答えを寄こす澄に、新兵衛は思い切り突っ込んだ。 「さっきから、分かりませんばかりだが……。分からぬと言えば、新兵衛。うぬの〈命石〉はどうしておる?」 「うん。何も反応してないけど」 「わしのもだ。こんなことが有り得ようか? 我らの〈命石〉は、この大和を故郷と定めてこの方、一族が連綿と受け継いできたものである。そんじょそこらの〈命石〉とは、わけが違うはずなのだが……」    新兵衛と十兵衛は、二人して腰の帯より提げられた紫の袋を見遣った。
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