〈命石〉は魑魅魍魎を寄せ付けない

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「あ。そうそう、その〈命石〉って何ですかぁ? さっきから気になっていたんですけれど」    澄も二人の袋をひょいと覗き込む。興味津々なその様子は、子犬がじゃれているようだ。十兵衛が「萌え。フヒヒヒ」と小さく呟きニタリと笑んだ。新兵衛はますます蒼褪めた。「ひ」とか思わず言ってしまったところを見ると、相当引いているのだろう。新兵衛はこの変態と縁を切る方法を、真剣に考え始めた。 「う、うむ。これは、魔を払う〈輝石(きせき)〉という石である。生まれると同時に親より持たされ、死ぬと一旦墓に添えられる。一族に誰か生まれれば、その輝石がまたその子に与えられ、輪廻循環していく石なのだ」 「これには不思議な力が宿ってる。特に魑魅魍魎の類には物凄く反応して眩く光り出したりする。それの善悪なんか関係無く、”人ではないもの”を教えてくれる。この力で、ご先祖様たちが俺たちを守ってくれるんだ。なのに」と新兵衛が澄をジト目で睨んだ。 「なるほどですっ。つまり、幽霊である私にも、反応しなくちゃおかしいですねっ。それで新兵衛は悩んでたんだ。納得ですっ」  澄が「ああ、すっきりですっ」と言って、にっこり笑って手を打った。新兵衛が大手門のところで首を捻っていたことを、澄は見逃していなかった。
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