石舟斎、じゃもじゃもと澄の正体を看破する

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「これは、厳島神社の神職の装いじゃも。それも、白袴はかなり高位の巫女だじゃも。職階は知らんじゃもが、階位は浄階(じょうかい)。身分は特級じゃろうじゃも。つまり」 「つまり?」  あまり興味の無さそうだった新兵衛が、ここでとうとう食いついた。やはり気になるのだろう。澄は「?」と首を捻っている。意味があまり伝わってはいない。 「つまり、最高位の神官じゃも」  じわじわとうるさい蝉時雨が止んでいる。静かに言い放った石舟斎の言葉だけが、仏間の中で木霊した。床にぽたりと落ちた新兵衛の汗の音までが聞き取れそうな静けさが、しばし奥の院を支配した。
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