幽霊でも、一人ぼっちは寂しいらしい

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「そうかな? 俺は普通だと思うけど。特別優しいとは思ってない」 「えへへ。そうなんですか。えへへへへ」 「お、おい。くっついて来るなよ、澄。飯が食いにくいだろ」  新兵衛は心底そう思っている。新兵衛とはこういう男だ。山で傷ついた熊を見つけた時も、平気で近寄り手当てしたこともある。思い出して欲しい。新兵衛が澄に出会った時を。そして、街道の人々の反応を。あの時、新兵衛は考えるまでもなく澄を受け入れてしまっていた。”怖がるなんて酷いじゃないか”と。怖がるのは、それ相応の理由を見つけてからでいい。新兵衛はまずそう考えてしまうのだ。  もちろん、これは危険な考えだ。この世界には、凶暴な獣どころか魔性生物だって存在する。危険かどうかを悠長に見極める暇など無い場合だって発生する。死ぬ確率が跳ね上がる。それでも新兵衛はそうするのだ。”死んだらそれまでのことだろう”。こんな、投げやりとも思える”覚悟”一つだけ携えて、新兵衛はこれまで生きてきた。 「んじゃ、うちにいても大丈夫だな。行くとこないなら、俺に取り憑いてても澄的には問題ないはずだから」 「嬉しい……。本当に、嬉しいですっ……」 「お、おい? 泣くほどのことはなかろう、澄よ」 「うえ? え? 俺、泣かすつもりじゃなかったのに」
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