”業刹”、新兵衛と澄に接触す

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「もちろん、そんなの分かってますよぅ。何を意識してるんですかっ、新兵衛はっ?」 「何って……」  澄の表情には一点の汚れもない。無邪気な笑顔がそこにある。澄に何の他意も無いらしいことが分かると、新兵衛はなぜだか急に腹が立った。 「ああ、もういいよ。一緒に寝ればいいんだろ」 「えっへっへー。そうそう、それでいいのですっ」  ずぼんと勢いよく布団に滑り込んだ新兵衛を、澄は大歓迎で迎え入れた。二人は仲良く並んで横になった。行動だけ見れば、まるでビッチのようであるが、澄にエロい気持ちはない。大変残念なことである。だが、この物語も当世ライトノベルであるので、美少女とのこうしたドキドキお泊り回は外せない。水着回など、さらに絶対に外せない。ご期待下さい。  しかし、ドキドキお泊り回は、この二人では成立しない。期待を裏切ってごめんなさい。裏切りはやっ。 「ふあぁー、しーんべー」 「なんだよ、うるさいな」    床に落ち着いてしばらくすると、澄がもじょもじょと動き出した。澄に背中を向けて寝ている新兵衛の首筋に、ひんやりとした吐息がかかる。新兵衛は「うわ。ぞっとする」と首を縮めた。これで妖艶な桃色吐息であればまだなんとかなるのだが、澄のあっけらかんとした声では色っぽく感じない。これでは間違いが起こらない。ここには間違った声優さんを期待する。
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