業刹、登場シーンをリテイクす

2/4

22人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
   *    *    * 「俺の名は業刹(ごうせつ)。人間どもが、”魔性生物”と呼ぶ者だ」  寝室の障子を引き開けて、業刹が新兵衛たちの前に現れた。赤い瞳がぎらりと光る。 「やり直すんだ」 「さっきのは無かったことにする気ですっ」 「なかなか思い切ったことをするやつだ。俺なら恥ずかしくて出来ないけど」 「私だって、あんな真似は出来ませんっ。業刹さん……。恐るべき魔性生物さんですっ」  澄に恥ずかしい指摘をされた業刹は、一旦寝室から退却すると、また何事もなかったかのように戻ってきていた。ここで撤退しない辺り、かなりの胆力であると褒めねばならない。さすがは魔性生物である。目的の為には、恥も外聞も捨てされる潔さが備わっているのだろう。ただの恥知らずなのかも知れないが。 「俺はそこの澄を知っている。いいか、人間よ。澄の為を思うのであれば、」 「俺たちの話も聞こえていないふりで通すつもりだぞ」 「凄いですっ。こんなに心の強い人、私、見たことないかもですっ。記憶が無いので多分ですけどっ」 「黙れ。俺は大事な話をしているのだ。貴様等、少ししつこいぞ」  業刹の精悍な顔に朱がさした。そろそろ耐え切れなくなっている。業刹は、魔性生物の中でもかなり上位にあるのだが、そんな剛の者でも、これだけ言われれば参るのだ。新兵衛と澄の突っ込みコンボ、恐るべしである。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加