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「なぜ、澄を消そうとする? それは……、成仏させるって、意味なのか?」
残された手段は”話し合い”だ。しかし、これは同等の力を持つ者同士でなければ交渉にすらなりにくい。詰まるところ、力の強い者は圧倒的に有利である。最後は力で従わせればいいだけなのだから。
「いや。それとはおそらく違うだろう。言葉通り、”消す”のだよ」
「それは、澄にとって、幸せなこと、なのか?」
新兵衛はちらと後ろを見遣った。
「さぁ、な。だが、少なくとも。俺は、そうだと信じている」
「消えるのが澄の為だと? 澄の為に消すと?」
「そうだ。それが、我々魔性生物の為でもある」
業刹はふっと赤い目を翳らせた。
「ふぅん。もしお前の言うことが本当だったとしても、そんなの納得出来ないな」
「貴様に納得してもらう必要は無い。そうする理由も俺には無い。邪魔だてするのであれば、ただ排除するのみだ」
「俺が簡単に排除されてやるとでも?」
「力の差は明らかだ。貴様の意思など関係ない」
「はいっ! 分かりましたっ!」
「む?」
「澄?」
新兵衛の後ろで、澄が元気よく手を挙げた。
「じゃあ、私が消されれば全て丸く収まるってことですねっ。では、さっそくお願いしますっ」
「な! 馬鹿! 前に出るな、澄!」
「澄……」
澄がずいっと前に出て、新兵衛と業刹の間に割り入った。
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