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「こっちに向かってくるのですっ! どうしますか新兵衛っ!」
「そうだな。邪魔にならないよう、道の端っこに寄っとこう」
「なんですかその無気力な選択肢! 先頭走ってる幼女なんて、ずいぶん立派な着物を着てますよっ! お姫様とかじゃないですかっ?」
「そうだな。多分、どっかの姫様だろ。ちんまいくせにかなり足速いよな。はっはっは」
「凄い他人事! 笑ってる場合じゃないですよっ! お姫様、めちゃくちゃ泣きながら全力疾走しているじゃないですかっ! にぎゃあああああとか叫んでますよっ!」
「だな。珍しいものが見れて得した気分。あんなに裾とか振り乱して走る姫なんて、なかなか見られるもんじゃない。はっはっはっはっは」
「私たちも襲われるかもとか考えないのですか、しんべーっ!」
「大丈夫。まぁ落ち着けよ、澄。俺もとっといた団子でも食べて落ち着くから」
「食っとる場合かっ!」
団子を懐から取り出した新兵衛の頭を、澄がべしんとひっぱたいた。が、それはやはりそよ風程度のものである。新兵衛は構わず団子を口元にまで取り上げた。
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