新兵衛、キレる

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「おお! よくぞやってくれた! 感謝するぞ、其処許(そこもと)よ!」 「なぁっ!」 「あ」  その姫に、若い侍が後ろから勢い良くしがみつく。団子は既のところで新兵衛の手をすり抜けて、またしても宙を漂った。しかし新兵衛は諦めない。さらに「ぬおお」と手を伸ばす。 「ここかぁ、ばあさぁぁぁぁんっ! はごっ」 「だあああああ! なにしてくれるんだ、じじいー!」 「あ」  団子は、少し行き過ぎながらも、華麗なクライフターンを決めて新兵衛のいるところを覗きに来た、じじいの口に収まった。そこへ。 「ギュゴオオオオオオ!」 「にぎゃああああああ!」 「姫――! もう離しませんぞ、姫――! はぁはぁ」 「もごもご。うまぁいぞぃ、ばあさぁぁぁぁぁん!」 「ほわあ! ししし、しんべー!」  ずざざざざと急停止した長さ20尺(6メートル)はあろうかという龍までが追いついた。緑の体は蛇のように細長く鱗に覆われ、鰐に似た頭には、牡鹿のような角がある。大きく裂けた口には鋭い剣歯がずらりと並び、喉の奥からは赤い炎が舌のようにちらちらと燃えていた。直後、新兵衛がキレた。
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