22人が本棚に入れています
本棚に追加
「うっぜぇぇぇぇ! なんなんだよ、お前らぁぁぁぁ! 俺の団子、返せよぉぉぉぉ!」
「ぎにゃあ!」
「姫! はぁはぁ」
「ばあさ、ふごぉ!」
新兵衛はまとわりつく三人を滑らかな体捌きで涙しながら振りほどくと、天に向かって咆吼した。吹き飛ばされた三人は、後ろから地面に倒れこむ。新兵衛の体格は、お世辞にも立派とは言い難い。当然、力の強さも知れている。下手をすると女の子と間違われる事もあるような新兵衛が、大人二人を含んだ人間三人を吹き飛ばしたのだ。しかも、命の危険から必死で縋り付いている者たちを。若干一名、邪な気持ちでしがみついていた者もいたのだが。
これが新兵衛の”武器”だった。楽をしたい一心でたどり着いた、徹底的に無駄を排除した体捌き。これが新兵衛唯一の取り柄だ。これには兄十兵衛もいつも舌を巻いていたほどの”武器”だった。
「てめぇのせいか、この龍野郎!」
「ギュゴォ?」
新兵衛はびしっと龍を指さした。瞳は怒りに燃えている。命石は、やはり青く光っていた。
最初のコメントを投稿しよう!