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「し、しんべー! 刺激しちゃダメなのですっ! この龍さん、相当強い龍さんなのですっ! 多分、昨日の業刹さんと同じくらい強いですっ!」
「なんでそんな事が分かるんだよ?」
「さぁ? で、でも、なぜだか私には分かるんですっ! 剣士さんの強さはさっぱりですけど、魔性生物さんなら分かりますっ!」
「へぇ。やっぱり巫女だからかな? だが、そんな事は関係ない! 俺の団子を駄目にしてくれた落とし前はつけてやる!」
業刹が現れた時にも説明したが、新兵衛がこんなに怒ることは滅多にない。そして、敵わないと思った相手を前にすれば、可能な限り逃げるのが新兵衛だ。しかし、例外の一つがこれである。新兵衛は、無類の団子好きだった。
「新兵衛の今の行動、私を守ってくれた時と一緒のような気がするんですけれどっ!?」
「違う。今度は団子の為の仇討ちだ。命懸けなのは一緒だが」
「えええ! つまり、私を守ることと、団子の仇討ちが等価だってことですよねっ? 私、4文(もん)で買える団子と同じってことですかっ? ひどーいっ! 私の感謝を返せですっ!」
「馬鹿野郎。団子の金額なんか関係ない。団子には、俺の希望が詰まってるんだ」
「希望安っ! たった4文で買えてるし!」
澄は激しく落胆した。昨日命懸けで守ろうとしてくれた新兵衛にだ。新兵衛はわずか4文の団子の為にでも命を張れる。そう思うと、ひどく損した気分になっていた。
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