星姫登場

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「ふええ。転んで痛いのじゃ。ふぎゅう。早う、早う龍をなんとかするのじゃあ」 「姫。痛いのですか、姫? お尻ですか? 胸ですかっ? おおお、お任せ下さい。すぐに拙者が、痛いの痛いの飛んでけーとして差し上げますはぁはぁ」 「ばあさん? そこにいるのかの、ばあさんや?」  幼女と侍とじじいの意識は、それぞれ違うところを向いている。共通の脅威を前にした人々は、防衛本能に基づいて行動する。特に相談などしなくても、最も安全な選択をするものなのだが、ここに集う者はみな特殊なようである。 「ギュオ?」  龍は困惑しているようだ。龍も新兵衛の腰にある命石には気付いている。しかし、恐れている様子はない。龍は言葉こそ操れないが、ちゃんと知性を持っている。だから、知っているのだ。”今の”命石になら、危害を加えられないと。 「なんだよ、お前。そのすまなさそうな顔は? 言っとくけどな、これはお前のせいなんだぞ。お前が無闇に追いかけるから、人はびっくりして逃げるんだ。姿を見せる相手は選べっていうこった。もう長いことここを根城にしてんだから、そろそろ他所者かどうかくらい分かれよな」  新兵衛がくどくどと説教を垂れだした。龍は「グギ」と苦しそうに呻いている。
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