星姫登場

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「にゃあにゃあとうるさい姫だな。それに自意識過剰だし。翠玉(すいぎょく)がお前を追って来たのはそんな理由からじゃない。見て分からないのかよ」 「にゃ、にゃにぃ? 口を慎めこの貧乏侍。うちは36万9千石、西国一の大名家毛利輝元が一の姫、星姫(ほしひめ)なるぞ。さぁ、恐れ入ったならそこへ土下座するがよい。にゃーっはっはっはっはっは」 「土下座させるんだ」 「本人は地面に這いつくばってますけどねっ」  そうなのだ。この幼女、名を星姫という。関ヶ原で敗軍の総大将を務めた輝元は、その後すぐに剃髪し、幻庵宗瑞(げんあんそうずい)と名乗って名ばかりの隠居をした。その毛利輝元の長女となる。  新兵衛には星姫がその小さな胸を張り、毛利家石高を声高に叫ぶ姿が悲しく映った。新兵衛には虚勢にしか見えないからだ。なぜなら、関ヶ原の戦前、毛利家の石高が121万石だったことと比べれば、言うまでもなく大減封なのだから。関ヶ原後の光と影。この星姫は、影の側で生きている。
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