龍を目の当たりにした者は、幽霊の存在にさえ気付かない

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「ここからなら、すぐそこですわい」  じじいがそう言ったので、新兵衛たちはついていくことにした。どうせ宿町にはもう着けない。良く考えれば、野営の準備すら持ってはいない。選択の余地は無い。仕方がないのでじじいの後に続き、峠の林道に分け行って、細く荒れた道を上り下りしたのだが。 「はふはふ。ど、どこが、すぐ、そこなのじゃあ。嘘つきなのじゃ。重罪なのじゃ詫びるのじゃすぐに土下座するのじゃあ」  ようやくにしてじじいの家らしきところへ着いた頃、星姫はもう虫の息だった。三人とじじいの目の前には、蔦の絡みつく年季の入ったあばら家が、ぽつんと一軒建っている。縁側の破れた障子の向こうからは、ほのかな蝋燭の灯りが漏れていた。じじいはさっさと家に入ってゆく。 「良く土下座させたがるやつだなぁ。自分のほうが土下座してるみたいになってるけども。ほれ、着いたんだからもう立てよ。だからそこのお付の侍におんぶしてもらえば良いって言ったのに」 「ふにゃ、ふにゃあ。う、うるさい、のじゃあ。偉そうなことを言いおって、そちこそ、へたりこんでおるではないか。へばり具合では、そちの方が酷いのじゃあ」
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