22人が本棚に入れています
本棚に追加
「いーや。俺は地面に手を付いていない。だから俺の勝ちだね」
「にゃにおぅ! うちはか弱い姫なるぞ! そちより年下だし力も弱い女子なのじゃあ。その分を考慮すれば、絶対うちの勝ちなのじゃあ。みゃあああ」
「大人げないですねぇ、新兵衛……。どっちもどっち、って感じですけどねーっ」
「いや、星姫の方が可愛いので勝ちだろう。まるで勝負にならぬな、これは」
「くっそー。澄なんか浮いてるんだから卑怯だぞ。お前にそんなこと言われるのは許せない」
「そうじゃそうじゃ。浮いておるなど、卑怯……。にゃに? 浮いて?」
「そう言われれば……」
星姫と若い侍は今更のように澄を見遣った。じろじろと上から下までしっかりと見た後、
「にぎゃああああああ! こやつ、幽霊なのじゃああああああ!」
星姫の絶叫が、深く暗い森の中で木霊した。
「あれ? 今頃ですかっ?」
澄が困ったように笑ってみせた。
「まぁなぁ。翠玉の後じゃ、幽霊にまで気が行かなかったかも知れないな」
新兵衛はくつくつと喉の奥で笑うのだった。
最初のコメントを投稿しよう!