毛利一門八家、福原亀甲丸広高

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   *    *    * 「では、改めまして。これも何かのご縁であろう。拙者、毛利家一門八家が一家、永代家老を務める家の次男で、名は福原(ふくばら)。亀甲丸広高(きっこうまるひろたか)と申します。此度は、星姫警護の大役を仰せつかっており申す。以後、お見知りおきくだされ」 「こやつはカメじゃ。うちはカメと呼んでおる。そちらもそう呼んで苦しゅうないのじゃ」  カクの家の居間、といっても、この家には他に仕切られた部屋など一つしかなかったが、取り急ぎ座卓などを部屋の隅に片付けた後、対面に座してお互いに自己紹介を始めていた。真ん中には小さく粗末な灯篭が、一つだけ置かれている。  座布団替わりとでも思っているのか、星姫はカメのかいた胡座の上に座っている。そうしていると、まるで本当の兄妹のようだった。土間ではカクが食事の用意に追われている。ぐつぐつと煮える鍋の音と、おいしそうな匂いが家中に漂っていた。じじいは隣の部屋で眠っている。ひょっとしたら永遠の眠りについていてもおかしくはないが、新兵衛はあえてそこには突っ込まず、スルーしていた。 「これはご丁寧に。俺は柳生新兵衛輝賢。柳生家の末っ子だ」  カメに比べ、新兵衛の名乗りは雑だった。
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