毛利一門八家、福原亀甲丸広高

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「柳生家の方でござったか」  カメが何か納得したように頷いた。 「ふぎゃあ! ややや、やぎゅうじゃと? にぎゃあああ、そちは隠しておったのか? そうじゃあ、うちらの不手際をこっそり調べ上げ、徳川に告げ口するつもりじゃったのじゃあ! にゃあああ、絶対そうじゃあ、そうに違いないのじゃあ! しかし、その手には乗らぬのじゃあっ……。これ以上、所領没収などさせぬのじゃあ! うにゅーっ!」  星姫は柳生と聞いた途端、血相変えて両手を振り上げぷりぷり怒った。 「かーわいいのですーっ。頭、なでなでしたいですーっ」  澄は星姫の頭の上をくるくると飛び回っては悶えている。  星姫も毛利家にとって大切な”戦力”である。姫とは、他の勢力とより強く結束するために必要な”武力”なのだ。その働き如何によっては、万の兵より強大な力。それがこの時代に生きる姫の”宿命”だった。星姫とて、幼いながらもその辺は心得ている。だからこそ、柳生にこれほどの拒絶反応を示すのだ。望めば、徳川すら意のままに動かすことが出来る位置にいる柳生家は、今、毛利家のような外様にとって、脅威以外の何者でもなかったのだから。にゃあにゃあと騒ぐ星姫に「はぁ」とため息した新兵衛は、カメに向かって口を開いた。
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