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「近藤さん、少し聞いていい?」
全員が黙り込んだ瞬間を見計らったよう、千歳が手渡された資料の中からある一点を指し示した。
「谷岡が議員になる前に卓さんの会社で働いてたって話、もしかしてそれ、大口議員にも言えるってことはない?」
笠井の名が記された経営者の一覧から、千歳が一人の名前を読み上げた。その意味を嗅ぎ取った近藤は、指先に記された一人の名に、顔を歪ませていた。
「……そうだ、よく気づいたな。お前も翔子さんも、なんでそんなことに気づくんだ。俺は全然気づかなかったのによ」
名字は異なるものの、大口と同名の人物が名を連ねていた。
「旧姓笹口晋作、議員になる数年前に養子に入って名字を変えていた。まず間違いなく同じ手口だ」
自分たちの手柄と胸を張る寸前で出鼻をくじかれ、近藤が少し不機嫌になったところで、病室の扉が開いた。そこには前田が立っており、その件で少し話があると千歳らに提案した。
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