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「本当だ……、なんで気づかなかったんだ。こんな重要なこと」
「吉備を探すよりよっぽど現実的だ。なによりこちらには翔子さんがいる。もしかするとどこかに姿を隠しているのかもしれん。探す価値はあると思うが」
決まったなと手を打った近藤は、笠井のことは頼んだと田辺に頭を下げた。「もう一人いるわよ」と親指を立てた田辺の後方を見れば、治療を終えた江口も「忘れんなよ」と悪態をついていた。
「笠井については恐らく急ぐ必要はないだろう。ならば俺たちは、吉備、卓さん、そして涌井さんたちを追うしかない。どうにかして彼らを掴まえる。良いな?」
全員が揃った返事を口にし、自然と手を合わせた。全てを終わらせる、そんな決意に満ちた気概が病室にあふれていた。
ーーしかしそんな千歳らの意図に反し、皆が勢い良く病室を出た十数分後、事態は急変する。
全ての線は点に繋がる。
そう言わんばかりに、全ての線は各々のスピードで、確実に目的の場所へ進んでいく。それは決して抗えぬ運命のようでもあった。
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