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昨夜の雨も上がり、明光寺は眩い朝日に包まれていた。
そんな中本堂では、
ポク、ポク、ポク・・・
木魚の軽快な音が、本堂に響く。
チーン・・・
凛の音が、響く。
礼拝。
お経を唱えているのは、このお寺の四代目の住職で、本名、五十嵐 重徳。
その後で、お経を読んでいるのは五代目になろうとしているのか別にして、息子の一徳。その横には、奉公に来ている二人。
奉公の二人は、同じ系列の寺の跡取りであるが、年が若いので預かってほしいと頼まれ、住職は一徳の刺激になると思い頼みを聞いたのだが・・・。
二人とも頭を丸めてはいるが、頼りの無い真面目なサラリーマン風の中山 修、中肉中背の気の弱い村田 晃の二人なので、元刑事の一徳の雰囲気に、ビビッていた。
朝のお経が終わった。
住職の見ていない所で、一徳はあくびをしながら、
「あーあ、終わった!。今日の当番は」
修が、
「表門の掃除が私で、晃君が境内、五代目が裏の墓地です」
「そうか。天気が良いから早く済ませて飯にするか」
「あの。五代目・・・」
朝から元気の無い晃だった。
「朝からおかしいぞ。元気が無いな」
一徳に言われると、
「実は、見たんです。昨日の夜も・・・」
震えている様に見えた。
「何を見たんだ晃?」
「実は・・・幽霊を見たんです」
「幽霊って、見間違いじゃないのか?」
「いえ。昨日で二回目です」
真剣な顔つきを察した一徳は、
「状況を説明してみろ晃」
「はい。昨日の夜、トイレに行く時に」
「どんな幽霊だ?」
「髪の長い、女性の・・・」
「でもな、昨日は雨が降っていたんじゃ」
「傘をさして、花を持って墓の方へ」
一徳は少し考えて、
「二回目って言ってたよな、最初はどうだったんだ」
「墓の前で泣いていました」
「顔は見たのか」
「美人でした。でも、目を離した隙に消えたんです」
「消えた? まあ、いつ頃だ見たのは」
「ちょうど、一ヶ月前でした」
晃がそう言った時に住職が、
「そろそろ、仕事を始めんと昼になる」
一徳が、
「晃、後で詳しく話を聞くからな」
そう言って、各持ち場に向った。
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