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玄関の外にいるその「誰か」はそんな事を言った。もしそれも幻聴であったとしたら初めてのパターンだなと僕は思ったが、そう言われてしまうと出ていかないわけにもいかないような気がしたし、もしかしたら両親がいつもの食料の仕送りをしておいて僕に連絡するのを忘れたとも考えられた。なので僕は「つきとめた!!お前の住所をつきとめたぞ!!」という「声」を無視して、なかばダメ元でコタツからはい出ると玄関にむかった。
だが玄関を開けるとそこには本当に宅配便の配達員がいた。この地区を担当しているらしい、いつもの四角く筋肉質の体にのった日に焼けた作り笑顔は、いつも僕が着払い料金を手渡ししている男だった。そして僕はまた「小人」が勝手な事をしたのだと思った。抗精神薬と深酒を飲んだ事が原因で、朦朧とした意識が勝手にやったことを翌日覚えていない、そういう事柄をネットの世界では「小人がまたでた」と表現するのだが、僕の「小人」は欲しくて迷っている商品を酔の勢いで勝手に注文してしまう癖をもっていた。だから僕は。
「ああ・・ちょっとまってください」と一言いって部屋の中に戻ると、コタツの上の財布を手に取り、手持ちの現金でたりるのか?と少し焦りながら玄関に戻ったが、その角ばった配達員は。
「いえ。コレは普通のお荷物ですね。サインだけおねがいします」と僕にとっては予想外の事をスラリと言ってのけた。
「え・・・?普通の荷物ですか・・・?だれからですか・・・?」
「ええっと・・・いや・・・送り主のところは何も書いてないですね」
「え・・・ちょっと身に覚えがないんですけど・・・。」
「いやでも間違いなく住所はこちら宛になってますから。ども!ありがとうございましたー!!」
そして配達員は、そんな風に戸惑う僕と、片手で持てるくらいの小さめのダンボールの荷物をおいて、中年にしてはいつも「元気だなー」と思わせる爽やかさで去っていき、僕はしばらくその後ろ姿に、正体不明の荷物が放つ少し不気味さが混じった不思議さを、呆然とみつめて貼り付けていたが、かといっていつまでもそうしているわけにもいかず、そのまま玄関をしめるとコタツにもどり、不思議な荷物をその上に置いた。
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